Review イスラエル諜報機関暗殺作戦全史


☆BOOK レビュー

 

イスラエル諜報機関暗殺作戦全史 上 早川書房 ¥3200
イスラエル諜報機関暗殺作戦全史 下 早川書房 ¥3200
原題
RISE AND KILL FIRST
副題
The Secret History of Israel's Targeted Assassinations

ロネン・バーグマン

原題はユダヤ教だったか
「立ち上がり素早く殺せ」という教えから


昨年イランの科学者がバイクに乗った暗殺者に銃撃射殺された
事件があった、その時に思ったのは「そこまであからさまに殺害するか
イスラエルは?」とむしろイスラエルとバレバレになる事を何故行うのかと
その疑問が先に来た、ある意味イスラエル関与が違うのではないか?とすら


その後に読んだのが上記の本でこれを読んだ後は
イスラエルが核攻撃を過度に恐れ(国土が狭い為に
仮に攻撃された場合に第2のホロコーストが起こると)
周辺国が核保有する事を国是で許容しないと分かる。
暗殺作戦ではないがソフトメロディー作戦
(シリア原子炉空爆作戦)の一部にも触れてる。


1940年代第2次大戦中から既にイギリス統治下のパレスチナ
イスラエル建国前からハガナーがイギリスをターゲットに
テロ暗殺を行っていた事、建国以降もパレスチナ・イラン・
シリアなど敵対国や敵対者のテロリストを執拗に
暗殺していった事が詳細に記されてる。
(ただし政治家に対する暗殺許可はその”レッドブック”に
サインされなかった、軍部や諜報部隊の暴走などもあったが)


1940~2010年代の流れで膨大な作戦数がなされた事
(8年首相が在任したとして数百件で実数は数千件)

輝かしい成功の陰に輝かしくない失敗
(無関係の民間人を誤認して殺害、防犯カメラに
マル映りしたために逮捕拘束されたり)

ドローンを暗殺に用いたのはイスラエルが世界初で
情報収集から実行までが諜報・情報分析・殺害命令・
実行の流れをシステム化していったこと
諜報機関・軍がバラバラだと無理で
イスラエル得意のハイテク活用も進めた)
それをアメリカ軍が学びに来てイスラエル
アメリカには100%情報開放し特に9.11テロ以降は
密接になったことなどが書かれてた。
(つまり日米同盟が世界一密接と言うのは
妄想であり、日本の経験からアメリカ軍が
学べる事は災害派遣や地理的要因/中国ロシア艦の情報以外
殆どないし実戦での相互支援を日常的に行った
NATOや常時アメリカ軍と密接なイギリス軍とは比較にならない)

ターゲットを補足してもイスラエル軍の交戦規則で
暗殺が容易でない事や国民世論で攻撃を控えたり
徹底攻撃をし過激になったりのムーブメントが
一定期間で交互に訪れた事。
(そして付随被害/巻添えも計算してること、
以前書いたがHVIだと多少巻添えがいようが実行する、
子供がいる場合はさすがのイスラエルも躊躇する、
暗殺対象が子連れで移動してたら暗殺し難いが
18歳以上だと無視するし、18歳以下でもアグレッシブな
軍高官や諜報部高官だとやるから・・・子供が安全とは
限らない)

政治家の人気取り選挙前にオシラク原子炉爆撃などの
作戦が実行された事(これは何処の国でも発生し
関係が疑われる勝った後成功した後は選挙でも勝つ)


これらのノートに書いていてごく一部しか書いてないが
諜報作戦用語やミュンヘンオリンピックでのテロ報復が
<神の怒り作戦>で映画<ミュンヘン>で一部が描かれてるが
どうも原作者は実在してない=作戦に参加してないらしい
執筆者は存在してるが。

ただしイスラエル軍公式HPには神の怒り作戦と書いてる
シェイエテット13等の軍特殊部隊=暗殺部隊で
マトカルだけがカウンターテロ作戦で出動してるわけでもない、
部隊の説明には出動作戦は書いてなかったが、実行作戦には
出動部隊を書いてるからその辺が分らない。
(陸海空全ての特殊部隊が暗殺作戦に関与してる、
軍事作戦というよりテロリスト殺害だから第2次大戦みたいな
大規模戦争・国家間の正面戦争というのは幻想でこの手の
非正規戦が世界各地での現実)

暗殺作戦や空爆でテロを封じ込めたりしても
完全ではなく、周辺国の核兵器保有も時計を遅らせることは
可能でも取得を止める事は不可能で100%暗殺作戦などが
成果を出したとは言い難い、むしろ<北風と太陽>で
強く出たり逆に懐柔したりすべきだったのでは?
テロリストが交渉に応じるとは思えないが。

イランも他国に感けてる暇と金があるなら
自国民を優先すべきで世界中から嫌われても仕方ない。


PS
北朝鮮大陸間弾道ミサイルの発射試験で1度だけ
失敗したのをアメリカの諜報機関がウイルスを仕込んだからと
流れたが、その後1回もミスってないので単に事故ったのを
手柄と吹聴しただけの気がするイスラエルは執拗に
攻撃や暗殺をしてるのに対し1回だけでしかもその後は
成功してるなら意味がない。