サンキューGemini

ネトウヨや自称軍事評論家には説明できない

 

2022年に勃発したウクライナ戦争は、従来の戦争のあり方と、現代テクノロジーがもたらす変化の両方を浮き彫りにしました。この戦争から得られた戦術・戦略的な教訓を、「従来から変わらない部分」と「テクノロジーにより変わった部分」に分けて解説します。
従来から変わらない部分
ウクライナ戦争は、技術がどれほど進歩しようとも、戦争の本質的な要素は変わらないことを再認識させました。
 * 兵站の重要性: 補給路の確保は、依然として戦争の勝敗を左右する決定的な要素です。ロシア軍は、開戦当初、首都キーウへの侵攻において、燃料や食料、予備部品などの兵站に問題を抱え、部隊の進軍が滞りました。このことは、いかに強力な軍事力を持っていても、それを維持するためのロジスティクスが不十分であれば、作戦は失敗するという古くからの教訓を再確認させました。
 * 士気の重要性: 兵士の士気や国民の抵抗意志は、物理的な戦力差を覆す力を持つことが証明されました。ウクライナ軍は、圧倒的な物量を持つロシア軍に対し、自国を守るという強い意志と高い士気で抵抗し、各地でゲリラ戦や機動防御を展開しました。指導者であるゼレンスキー大統領の国内外への強いメッセージも、この士気維持に大きく貢献しました。
 * 地理的要素の重要性: 地形や気象などの地理的要素は、作戦の成否に大きな影響を与えます。ウクライナの広大な平原や、泥濘化する春先の土壌は、ロシア軍の機甲部隊の動きを鈍らせ、ウクライナ軍の防御を助けました。
 * 指揮官の役割: 戦場の指揮官の判断力や決断力は、部隊の運命を左右します。ウクライナ軍は、権限を現場の指揮官に委譲することで、迅速かつ柔軟な対応を可能にし、ロシア軍の攻撃に対抗しました。逆に、ロシア軍は中央集権的な指揮系統により、現場の状況変化への対応が遅れ、多くの指揮官が狙撃されるなど、大きな損害を被りました。
 * 外交と情報戦: 軍事的な手段だけでなく、政治、経済、情報といった非軍事的な手段を組み合わせた「総体戦」の重要性も改めて示されました。ウクライナは国際社会への積極的な情報発信を通じて、欧米諸国からの支援を引き出し、ロシアへの制裁を促しました。これは、情報戦や心理戦が、国際世論を形成し、戦争の行方を左右する強力な武器となることを示しています。
テクノロジーにより変わった部分
ウクライナ戦争では、現代のテクノロジーが戦術・戦略に劇的な変化をもたらしました。
 * ドローンの普及と影響:
   * 偵察と攻撃: 民生品を含む安価なドローンが偵察、観測、さらには攻撃にまで広く活用されました。これにより、戦場の「透明化」が進行し、従来の隠蔽戦術が困難になりました。
   * 無人機による精密攻撃: FPV(一人称視点)ドローンによる敵陣地や車両への精密な自爆攻撃は、従来の歩兵や砲兵の戦術を大きく変え、安価な手段で大きな戦果を挙げることを可能にしました。
 * 衛星通信と情報戦:
   * スターリンクの活用: イーロン・マスク氏の衛星通信サービス「スターリンク」は、ウクライナ軍の通信網として不可欠な存在となりました。これにより、ロシア軍のサイバー攻撃や通信妨害に対しても安定した通信を維持し、迅速な指揮・統制を可能にしました。
   * オープンソース・インテリジェンス(OSINT)の台頭: 衛星画像やSNSに投稿された情報などを分析することで、戦況や部隊の動向をリアルタイムで把握することが可能になりました。民間人や研究者も情報戦に貢献し、戦争の状況がより多くの人々に可視化されるようになりました。
 * サイバー空間の戦場化:
   * サイバー攻撃: ロシアはウクライナのインフラや政府機関に対して大規模なサイバー攻撃を仕掛けましたが、ウクライナは海外の専門家の支援なども受け、これを防衛しました。サイバー空間が、物理的な戦闘と並行して展開される重要な戦場であることが改めて認識されました。
 * 精密誘導兵器の進化:
   * 長距離攻撃: HIMARS(高機動ロケット砲システム)に代表される精密誘導兵器は、後方の司令部や補給拠点などを正確に攻撃し、敵の継戦能力を低下させました。
   * 対ドローン技術: ドローンの脅威に対抗するため、対ドローン用の電子戦装備や、携帯型の対ドローン銃なども開発・活用され、テクノロジーの攻防が激化しています。
これらの戦訓は、今後の軍事戦略や安全保障政策を検討する上で、極めて重要な示唆を与えています。従来の戦争観に加え、テクノロジーの進歩がもたらす新たな脅威と機会の両方を考慮に入れる必要性が浮き彫りになったと言えるでしょう。