ブックレビュー ロンメル将軍 副官が見た砂漠の狐

 

ロンメル将軍 副官が見た「砂漠の狐

ハインツ・ヴェルナー・シュミット
角川新書


イギリス軍将軍 ウェーヴェルの反撃作戦名
「戦斧」バトルアクス  battle ax
敗れたイギリス軍戦車ドライバーがドイツ参謀部将校の
尋問に「私の意見では戦車を高射砲で撃つなんて卑怯ですな」
近くにいたドイツ砲兵が興奮して言葉を挟んだ
「なるほどね、だったら88ミリ以外にはぶち抜けない装甲の
戦車で、押しかけるあんた達は、もっと卑怯だぜ」
恐らくこのシュミット少尉の記録から広まった有名な逸話
他にもイギリス軍将軍ピナールがドイツ軍と交戦してる時に
ドイツ軍の攻撃を受けている上に、友軍NZ軍の砲撃も文字通り
フレンドリーファイアーで炸裂し友軍戦車砲の砲撃も受けただけでなく、
爆撃までされていた(同士討ち)上官の軍団長に電話して
「いいかね、ノリーあんたは誰を攻撃してるのだ?
私かそれともロンメルか?」(この将軍同士の関係が必ずしも
良くなかったことも遠因)

偶然ロンメル将軍の副官を拝命した少尉が側にいて砂漠の狐
描いた珍しい本、人事部の計画的ローテーションなどではなく
行き先が無い時にたまたま配属されたに近い上に、直に
副官を与えられたのではなく当初は明確な職務は無かったが
参謀部の将校達が負傷したりロンメルの不興を買い去って
その地位に就く。

参謀部
Ⅰa-作戦担当(戦術決定)
Ⅰb-補給担当
Ⅰc-敵情判断担当(情報)
Ⅱa-人事担当

らくだに乗る=左遷の隠語
A・Mアルターマン=不味い牛肉缶詰

直接的に食料兵站を書いてないが食事風景を説明してるので
ドイツ軍は食事の面でも当然ながらアメリカ軍とは
雲泥の差で<泥>の方だったことが分る、鰯油漬けや
タラの塩干しなどを食べさせられたドイツ兵は?ドイツ人で
なくても誰しも喉が渇く、しかし現在でも砂漠で水を確保するのは
困難で敗軍となるドイツ軍が容易に水を飲めるはずもなく苦労してた。

ロンメルの有名なゴーグルが元々イギリス軍捕虜の装備から
貰ったもの。

側近として仕え大将から元帥に昇進した時にもその
戦闘スタイル等を見てるので当然ロンメルを崇拝とも
言える敬意を抱いてるがベタ褒めではなく、客観的に
描いてる部分もあるのでロンメルが自らの作戦に
異を唱える部下や消極的な部下も左遷しまくったり、
後々それがアフリカ戦線での大敗北に繋がることも
書いてる(トブルクなど戦線を拡大せずに一定の範囲で
留まったら最終的な大敗北はしなかった、ロンメル
兵站を無視した結果敗北した事までは記述してないが
決して完璧な戦略家ではなかった)

ただし一般兵士には絶大な人気があった
(鈍い将校には厳しかった)
戦略的戦術的センスは天性の鋭さがあった
幾ら優れていても兵站無視、エニグマ暗号を特に
ロンメル関連は徹底解読されつつ抜けだった、
アメリカ軍の兵器体系(兵站)には当然最終的に敗北する。
作戦面でも暗号が筒抜けだったから最終的には待ち伏せされ壊滅。

生活面食事等は質素だった(司令部はその土地で1番
豪勢な建物を接取するのが普通で食事もご馳走を食う将官
多かったが彼は狩猟の肉や今で言うMREの缶詰など)
しかも酒を飲まないので<参謀連中も飲めない>特典付き。

シュミット少尉が参謀部付き副官より戦場を希望し
中隊長として戦う事を希望しロンメルも許可して
中隊長として奮戦するがその頃はドイツ軍が敗戦を
重ねた時期で殆ど敗北し部隊も壊滅に近くなり、
指揮する部隊がなくなったのでドイツ本土へ
帰国した後にドイツ軍がアフリカで降服した為に
戻る事はなかった(しかしその後のどこかの戦闘で
生き延びた事になる)

ドイツ軍(シュミット少尉)は知る由もなかったが
イギリス軍は1942年には既にエニグマ暗号機を
解読していたのでドイツ軍の動きは筒抜けになっていた為
待ち伏せを多用され(本文中にも何度も待伏せをされたこと
イギリス軍が数的質的有利だけでなく地理的優位を占めてた事
などが述べられてる、解読を公表したのが出版後だから
なお更それには触れられてないし敗北理由を責任転嫁もしてない)
ドイツ軍が苦戦した記述が多数ある。

ロンメルと離れアフリカ戦線で戦っていた時に
2~3度は見かけたり会って声を掛けてもらったりしたが
本土帰国後は会ってない、そしてヒトラー暗殺計画が
発生。