コール911ネトウヨが知らないアメリカ軍ルーティン

アメリカ軍の負傷者搬送要請連絡 
ナインラインと言うが、なぜナインラインか?

また具合的交信内容は何を伝えるか?

 

 

「ナインライン (9-line)」は、アメリカ軍において負傷者(戦傷者)の搬送を要請する際に使用される標準的なフォーマットです。その名の通り、9つの項目を順番に伝えることで、正確かつ迅速に情報を共有し、負傷者搬送チーム(メディバック:MEDEVAC)の出動準備を整えることを目的としています。
なぜ「ナインライン」と呼ばれるのか?
このフォーマットが「ナインライン」と呼ばれるのは、負傷者搬送の要請に必要な情報が**9つの項目(ライン)**に集約されているからです。これらの項目は、負傷者の状況、搬送場所、安全上の脅威など、搬送任務を遂行するために不可欠な情報を含んでいます。
具体的な交信内容
ナインラインで伝えられる9つの項目は、以下の通りです。
 * ピックアップ地点 (Location of the pickup site)
   * 負傷者がいる正確な位置をグリッド座標(MGRS: Military Grid Reference System)で伝えます。これは最も重要な情報の一つであり、迅速な到着のために不可欠です。
 * 無線周波数、コールサイン、およびサフィックス (Radio frequency, call sign, and suffix)
   * 連絡を取り合うための周波数、そして要請元の部隊のコールサインと識別子を伝えます。
 * 負傷者の人数と緊急度 (Number of patients by precedence)
   * 負傷者の人数を、緊急度に応じて以下のカテゴリに分けて伝えます。
     * Urgent (緊急): 2時間以内に処置しなければ生命、四肢、または視力に危険が及ぶ負傷者。
     * Urgent Surgical (緊急外科): 緊急で外科的処置が必要な負傷者。
     * Priority (優先): 4時間以内に搬送しないと、状態が悪化する可能性がある負傷者。
     * Routine (定期的): 通常の診療で対応可能で、緊急性の低い負傷者。
     * Convenience (便宜): 軽傷で、他の搬送手段も利用できる負傷者。
 * 特別装備 (Special equipment required)
   * ホイスト(吊り上げ装置)、医療用具、または夜間用の暗視装置など、搬送に必要な特別な装備を伝えます。
 * 負傷者の人数と種類 (Number of patients by type)
   * 負傷者の人数を、歩行可能かどうか(例:担架が必要な負傷者と、歩行可能な負傷者)で伝えます。
 * ピックアップ地点のセキュリティ状況 (Security of the pickup site)
   * ピックアップ地点が安全か、敵の攻撃を受けているか、あるいは敵が近くにいるかといった情報を伝えます。
 * ピックアップ地点のマーキング方法 (Method of marking the pickup site)
   * スモーク、ストロボライト、VS-17パネル(航空機から視認できるオレンジ色のマーカー)など、航空機に地点を知らせる方法を伝えます。
 * 負傷者の国籍と詳細 (Patient's nationality and status)
   * 負傷者の国籍(例:米軍、同盟軍、民間人)と、戦闘員か非戦闘員かを伝えます。
 * NBC汚染の有無 (NBC contamination)
   * 核(Nuclear)、生物(Biological)、化学(Chemical)兵器による汚染があるかどうかを伝えます。
このナインラインフォーマットは、情報を簡潔かつ明確に伝えるための標準的な手順として、アメリカ軍のあらゆる部隊で訓練されています。これにより、言語や状況に関わらず、すべての関係者が同じ情報を共有し、負傷者への迅速な対応が可能になります。