本 レビュー 人質の経済学


☆人質の経済学

ロレッタ ナポリオーニ(イタリア人)

村井章子訳

文藝春秋


2016年出版でちょっと古く
2005年くらいからのアフガン
イスラム国・イラクシリアやソマリアなどの
治安と国家が無いような地帯での誘拐ビジネスの解説。


ソマリアでの海賊がミッションアトランタ等により
壊滅的打撃を受け転職して誘拐ビジネスに手を染める流れ
ソマリアの海賊たちが海賊になるきっかけや、
もちろん濡れ手に粟で成功する時は成功するが
失敗のリスクは末端の下っ端のみに負わせられ
成功のリターンはスポンサーが殆ど奪う事
(インフラや物資が豊かではない為にソマリアでは
意外と分業制になっていてその為に小口の投資家/
物品の提供者が多いことなど実態の解説も)

そして末端の奴は<宵越しの銭は持たねえ>的に直ぐ散財し
投資家は拡大再生産でさらに海賊誘拐ビジネスに投資することも分る。


イラクやシリアで日本人が誘拐された、もちろん彼らにも
相応の責任はあるが被害者を最初から<自己責任>で罵倒で迎えた国は
日本だけだったそうだ、しかも安倍総理が中東を訪問し
IS打倒を打ち出したタイミングの悪さなどもきっちり批判してる。
(昨年だったかフランス海軍ユベル隊員が救出作戦で戦死した際には
さすがに一部は批判もされたが日本ほど酷くない)


アメリカ人Kayla Mueller(バクダディ殺害作戦での由来になった
女性の誘拐被害者)も決して褒められた行動ではなかった事も
明かされる。


そして誘拐ビジネスが出来なくなると
(これがある意味矛盾で危険地帯に観光客が来るわけ無い)
難民輸送ビジネスに切り替わり、ここからが日本では解説されなかったが
欧州でも難民ビジネス(日本で言う貧困ビジネス生活保護者を
食い物にするような奴の難民ビジネス版)が存在しその手口も
紹介していた。


1番の読みどころは成功事例失敗事例の
人質解放交渉で国ごとにそれこそお国柄が出ること
断固拒否!!型と表向きは拒否!!で裏取引型
幾らでも払いますよ型、そして欧州特にイギリスは
セキュリティー会社が有能だからそこに依頼する国や家族がいる。


諸悪の根源は愛国者法(9.11でのアメリカの資金規制)との
論調だが大きな理由の1つだろうが100%ではないと思う、
しかしイラク戦争での混乱が中東の混乱イスラム国の誕生だとか
結果論だがブッシュの行った事がバタフライ効果で大嵐になったかも。