レヴュー アウシュビッツ潜入記

 


☆BOOK レビュー

アウシュビッツ潜入記」
ヴィトルト・ピレツキ

杉浦 茂樹訳

みすず書房


\4,500


2020年8月

著者はポーランド軍人(非ユダヤ人)で
アウシュビッツに潜入し諜報と収容所内での
抵抗組織を立ち上げる為自ら連行されている
ポーランド人達のナチス兵に近寄り
一緒くたにされアウシュビッツ
輸送された1939/09~1943/07に
脱走するまでの間に収容所内で
起こった事を軍総司令部へ送った報告書
武装蜂起を目指したが結局は内部からも
軍も連合軍も関与・発生しない、ユダヤ人が末期に
蜂起したのは別でそれは映画”サウルの息子”と
もう1作品あった)

もちろん脱走後に記憶を頼りにタイプしてるので
若干の記憶違いも発生してる(収容者の階級の混同程度)
まさかナチスが情報公開を徹底する訳がなく徹底的に
隠蔽したので彼が体験した事や見聞きした事での
範囲内でしか知りえないがドラマ小説のような
過剰な装飾がなされない簡潔な文書だからこそ
収容所内での地獄がより鮮明になって描かれる。


人名を暗号で161など換字した為に人物の
特定をする為に文章は有ったが出版化が
難しかったらしい(暗号鍵のコード表の
一部が見つかった一部でも
判明すれば解読はやり易くなる)

一般的な解説と異なり時系列に沿って
報告されるのでアウシュビッツ初期から中期の
変遷が手に取るように分る(収容者の待遇や
”大量殺戮の効率化”等々)

銃殺・撲殺だけでなく軍用犬に襲わせたり
本物のお湯のシャワーを浴びさせた後に
ガス室送りの口実がシャワーだった)
雪が降る屋外に整列させ凍死させていった事、
そして整列整列で1日3回ほど整列させられた事
脱走者一人当たり10人が見せしめに殺害されたが
1943年には報復がなくなったこと
(ただし失敗し捕まったら殺害)
当初は手荷物の持込は禁止で郵便物の受け取りも
食料禁止だったのだが途中から食料も受取れる
ようになり<送ってくれる人がいれば助かる確率
=餓死から助かる確率が上がった事>

知識人や高官など上流層は最低最悪の食事を
摂取できず劣悪な肉体重労働に耐え切れず
直に倒れ<煙となって出て行く>
(著者の僅かながらのブラックユーモア、
収容者番号4859の外側4+9 内側8+5は
両方とも13で不吉だというのも仲間同士の
会話があったり悲惨だがその中でも
人間らしさがあった)

 


ナチスには殺す理由はいらず
ユダヤ人だから><ポーランド人だから>
それで殺害の理由になった。

それでいて美女のユダヤ人がいれば
親衛隊員が<個人的従軍慰安婦>にして
秘密が漏れないように暫くすれば
ガス室送りにした。
(食料を優遇し形の上では
家政婦みたいな事をさせた)
ドイツ人らしく収容者番号と処刑番号を
突合せ手違いがないようにダブルチェックを
していた事も分る(それでも間違いは起こる)

レンブリカとアウシュビッツの違い
アウシュビッツは総称でそのメインが
レンブリカ)もっともアウシュビッツ
あの巨大処刑場が出来なければアウシュビッツ
単なる小さな村だったのだろう。

絶滅収容所強制収容所は翻訳者や鑑賞者読者など
殆どの人が<理解してない>から区別が出来ないらしい。

 

残虐性に関しては特に知ったことはないが
コルベ神父(死刑の身代わりになった人)を
目撃したらしい

映画/サウルの息子がほぼ台詞がなく
流れだけでの描写だったのでこういうシステム
だったのかとその意味が分かった。